前回③の続き。
その女性は開け放たれた障子戸を背に正座しておりました。
上は白い道着のようなもの、下は濃紺の袴を履いており、どこか中性的な印象でした。まるで別式女のような印象を受けました。(別式女とは男のような恰好をした女武芸者で江戸時代に存在していました。)
障子戸からは縁側とそれに続く和風の庭、そして遠く朝日を受けてそびえたつ山々が見えました。
一方室内は昔の家屋にありがちな、せっかくの朝の光もあまり差し込まない薄暗さでした。
障子戸を背に座る彼女の左側に床の間がありました。つまり床の間に対して90度になる位置に座っていたのです。
(これもどういうことかあとで意味が分かりました)
彼女を見て真っ先に
「なんでわざわざ明るい見晴らしのいい庭に背を向けて暗い部屋に向かって座っているんだろう?」
と不思議に思いました。
入口に立つ私に気づいた彼女は、とっさに右側に置いていた木刀か竹刀らしきものを掴んでトン!と床に突き立て、片膝を立てて「何奴!?」と身構えました。
ああ、そうか。このとき、なぜ彼女が光に背を向けて座っていたのかが分かりました。
いつなんどき暗闇から敵に襲われても咄嗟に動けるようにと。
そしてちらりと床の間に飾られている真剣が見えました。
彼女は突然現れた私に思い切り警戒してはいますが、それでも敵ではないと判断したようです。
もしも敵と認定したら、迷わず床の間の真剣を左手で掴んでスラリと右手で抜いていたことでしょう。
そのために床の間が左に来るように座していたのです。
何か重大な秘密を守るために、彼女は常に臨戦態勢なのだと分かりました。24時間365日。
とにかく彼女に色々話しかけても警戒心を解かないし、私が未来の自分だと分かっていてもなかなか自分のことを話そうとしないのでてこずりました。
H先生の助けやアドバイスをいただきながらなんとか聞き出した情報はこうです。
・彼女は巫女としての能力と一流の剣の腕を持つため、この任務にふさわしいと白羽の矢を立てられた。
・彼女はそれを誇りに思い、終生人と関わらず、秘密を守り通した。
・人生に対する楽しみも、女性としての喜びも、全てを捨ててこの任務に当たった。
・屋敷には出入りの使用人が1~2人いるが、彼らに対しても決して心を許さなかった。
・彼女は口がきけなかった。敵の手に落ちても秘密をしゃべらないように自ら喉を傷つけるか何かしたようだった。(私との会話はテレパシー。筆談も自分の痕跡が残るからと嫌がった)
・この屋敷も彼女の存在も、そして彼女が命を懸けて守ろうとした秘密も、全て世間に知られてはならなかった。
・彼女の生きた時代は約400年前。2代将軍徳川秀忠から家光に代替わりした頃。
※この400年前というのはあとで自分でダウジングして出た数字で正直自信がありません。数字が大きくてちょっとドラマティック過ぎますよね。(笑)
彼女はどうしても、守っている秘密が何なのか明かしてくれませんでしたが、粘り強く尋ねてようやく懐からあるものを取り出して見せてくれました。
布に大事そうにくるまれていたのは直径70mmくらいはありそうな大きな水晶玉でした。
水晶玉を見て思わず「あれぇーー?」と声を上げてしまいました。
「先生、私この水晶玉と同じのを、今持ってますよーー?」
「ええっ!?どういうこと?」先生もびっくりなさっていました。
次回最終回⑤へ続く。
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